さかなの調理

ゲームの感想をだらだら書きます

ときめきメモリアル4 エリサ・D・鳴瀬 感想


悪い意味でときメモの古さが出てるシナリオだなあと思いました。都子ほどではないけど色々と書くのでご承知ください。



ゲームで「ハーフ」とか民族的なアイデンティティを扱うのは難しいのに、「金髪碧眼の大和撫子って斬新じゃん!?」ぐらいのノリでやってるなあという印象だった。まあときメモに限った話ではなくて、東鳩のレミィから最近ならデレマスのアナスタシアやメアリー、フェイフェイ達に至るまで、ギャルゲーでそういうの真面目にやってると思うことはめったにないのだが。とはいえ、そんな中でもエリサは特にデリケートなテーマを雑に片付けていると思う。


エリサは在日アメリカ(イギリス?)人二世で、生まれた時から宮城に住んでいて、きらめき高校に転校してくるまではそこから出たこともない。英語も喋ることができず、日本人として生きてきたが、見た目は金髪碧眼なので初対面の人からは外国人に間違えられ、本人もアイデンティティに悩んでいる。

以上に挙げた彼女の生い立ちは、シリアスに向き合えばドラマか映画の一本ぐらいは作れそうなものだ。それに明確な答えが出るような問題でもなく一生ついて回る。

エリサは自身の顔立ちや髪色がそぐわないことを理由に縁日や初詣で和服を着てこない。これに関しては花見デートで着物姿の女性を見てたまらず途中で帰るイベント、髪を黒く染めようか悩んでいるところを主人公に「あんぱんみたいな和洋折衷の形もあるし、鳴瀬さんらしい形を追求すればいいんじゃない?」と言われて吹っ切れるイベント、そして初めて振袖で主人公の前に立つ卒業式という形で一連のストーリーになっている。

私はこの流れ自体は好きだ。デリケートな話題だからって一切扱わないというのは違うと思うし、落とし所としても妥当で、主人公との信頼関係と絡める意味でもギャルゲーという媒体を使った描き方としてはよくできていると思う。

ただ、それに付随するイベントがやばい。

たとえばときめき海デートで水着姿のエリサに主人公が感銘を受ける場面がある。シチュエーション的にテンションが上がること自体はおかしくないのだが、そのときの主人公のモノローグが、

「グラマラス金髪美女!」

台無しやん……? PSPに向かって本気で暴言吐きそうになったよね…

確かにエリサらしさってのは金髪碧眼の見た目を含むかもしれないけど、本人を苦しめもするその記号を親しい仲のおまえがステレオタイプに消費してどうするんだ。転校してきてすぐならともかくときめき状態ですよ? 

ホント何も考えてなさすぎてこの姿勢のままエリサと交際すると絶対どこかで深刻な溝ができるぞ。ハルちゃん攻略以来の論外主人公でした。

西洋系の美女がダイナマイトボディでうひょー! みたいなのはせいぜい90年代前半ぐらいまでのノリだと思うけど、それをゼロ年代も終わる頃にポンポン放り込むあたり、ときメモの古さの悪いところが出てる(まあエリサのメインシナリオと海イベントはライター違うんだろうけども…)

修学旅行ハワイのエリサが現地人に間違えられるイベントで、相手が喋ってる英語を「ペラペラペラ…」と表記してそのまま声優に読ませてたのも酷かった。古いし滑ってるし、何より最低限の「外国」へのリスペクトは必要でしょう。ステレオタイプで見られるのが嫌だという話をしているはずなのに説得力がなさすぎる。

文化研究の類をかじっている身なので日本文化の「魂」「真髄」とかいう単語にも眩暈がするんだけどそれは置いても、いくらエンタメの変換があるとはいえ守らねばいけないラインはあると思うのよ…

そんなわけで最初の弁当イベント辺りからずーっとモヤり続けていた。


とはいえエリサ本人は可愛かった。宮城弁はしっかり監修されてたし、遊ぶのが大好きで何事にも真剣なのが良い。

いくつかある和歌イベントをはじめやはり日本文化関係の台詞に力が入ってる印象だったけど、私はむしろ観覧車で退屈そうにしてもっと遊び倒したい雰囲気出してるエリサとか、スキーやスケートでイケイケドンドンになってるエリサが好きだった。剣道絡みも真剣勝負を旨としてて爽やかだったなあ(決着を描写しないところが素晴らしい)

あと彼女も私服のセンスが良い。自分に似合う服がわかってるようなチョイスだった。特にときめき秋服のお団子に簪スタイルはゲーム全体でも屈指のコーディネートだと思う。

まあ若干恋愛脳というか、主人公に重きを置きすぎてない…?ってところも見受けられたのは残念。特にときめき弁論大会は都子よりもエグかった。そういう危うさも含めて「この愛は永遠」というエピローグに、ちょっと大丈夫…??と突っ込みたくなるふたりではございました。でもそのわりに好感度上がると弁当のクオリティ落ちるところとかはすごく面白かった。


まあゲームで何をどこまでどう描くかということについては、メジャーなRPGとかでも試行錯誤しているところではあると思うし、国内の限られた層に向けたこういうジャンルでは手薄になりがちというのはわかるんだけど、やっぱり無視してはいけない要素だと考えているので別タイトルを遊ぶときにも注意して見ていきたいと改めて思った。

重ねて書くけどエリサ本人は好きだし、最後の振袖を見たときにはやはりグッと来たので攻略じたいはそれなりに楽しめました。やってよかったと思う。


次は今作のナチュラルボーンジーニアス枠響野さんです。